NAGI GUITARS kuro.E リペアの記録です(フレットバリ取り)

今回はフレットサイドのバリ取りの
ご依頼をいただきました。

ありがとうございます。



塗りつぶしでない黒がサテンフィニッシュと相まって良い雰囲気です。
お子さんの弾いているギターとのことですが、、シブすぎる。



実際ネックのサイドを触ってみると
確かに痛い。
指に引っかかって、切れはしないまでもすり傷のような跡が付く感じです。
危険ですし、気持ちよく演奏は出来ません。早速削りましょう。


写真では分かりづらいかもしれません
がフレットの端が指板の側面と面一です。この状態ですとほぼフレットの端
が指に引っかかるように思います。



フレットの端の両側が尖っているタイプなので、指に引っかかりやすいようです。


最初大きめのヤスリで削り始めましたが、今回はどうにもやりにくいので目立てヤスリに持ち替えて削っている所です。
フレットの端の部分を削りつつ指板を削りすぎない、かつフレット端の削る角度をローポジションからハイポジションまで一定に保つよう集中力を維持しながらの作業です。

ちなみにマスキングテープがゆるゆるに貼ってあって、だらしのない感じですが、
今はフレットサイドを削るだけなのでそうしています。
指板へのマスキングテープ、粘着力によるダメージがないわけでもないと思っているので、ピッチリと貼るのは必要な時だけにしています。テープをはがす時、指板の木の
繊維が一緒についてきたりすると気が気ではありません。

削って確認、削って確認を繰り返して、だいぶ指に痛くない指板サイドになってきました。
外に飛び出している両端が削れたためです。

続いてフレット端の両側をヤスリで
削って、さらに指の引っかかりを無
くします。指板に傷がつかないよう
にヤスリの底面はすべすべです。



写真にはありませんがフレット端をを丸める工具で軽く削った後、紙ヤスリで磨きます(写真は1000番の紙ヤスリです)
紙ヤスリの後はスチールウールで仕上げます。



磨きが終わりました。指板にオイルを塗り保湿します。



作業前と作業後の比較写真です。写真が小さめで申し訳ありませんが、右側の
写真はフレットの端がわずかに指板の側面よりも内側に入っていることがわか
っていただけると思います。

Before
After



これで指を痛めることなく演奏に専念していただけると思います。
この度はご依頼をいただきまして、ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。

Headway HD-126J リペアの記録です(フレット交換)

今回はフレット交換のご依頼をいただきました。ありがとうございます。

フレット交換に伴いナットの交換も必要になるパターンでした。

高音弦のローフレット側を中心に、弦による摩耗でフレットにくぼみが出来ております。よく弾かれてきたのでしょう。
フレットの高さから見て、すり合わせでは対応できない状態で
す。

フレットを抜き始める前に指板オイルで保湿しておき、指板の剥がれなどのダメージを極力防ぎます。ハンダごてで温めながら抜いたので指板へのダメージは最小限でした。
抜き取ったフレットのタング(指板の中に打ち込まれるフレットの足の部分)を見てびっくり。「細っ!」
こんなに細いタングは初めて見ました。

指板上のバリ取りとともに指板の直線が出ているか、アールが崩れていないか、削りながら整えます。
今回の指板は20インチアール…
20インチアールのサンディングブロックを持っていない。即注文!

1フレットから7フレットまでは16インチアールです。両者のつなぎ目加減がなんとも気をつかいます。

指板の整え、無事終了です。
弾く指によるへこみやジョイント部のへこみは無理に追わないようにし
ました。

いよいよフレット打ちですが、
やはりというか、そうだよねと言うか
準備していた同サイズのフレットが全然入ろうとしません(泣)
タングの幅の違いが…
今回はバインディングがあるので、普通のフレットソーは使えません。
う~ん(汗)どうするか…悩んだ挙句
フレットソーを短く切ることにしました。新品だったのに…グスン
でも、また使う時が来るからまあ良いか。

新しく出来た工具で慎重にフレットの溝を拡げました。


フレット打ちの様子です。
無事フレット打ちが終わりました。

フレットは指板のアールに沿うように
ペンチでアールを修正して打ち込みました。

そしてフレット上面のすり合わせを行います。
指板の削り(土台づくり)の段階でかなり追い込めたので、すり合わせは程々で軽めに終われました。

次はフレットの両サイドの処理を行います。ヤスリでフレットサイドのバリ(でっぱり)を削り取った後、フレットのサイドを角度を付けながら削れる専用の工具で削ります。

ヤスリ等で削ったフレットの端は鋭利
なままなので、丸みを付けるように削
っていきます。
最終的にはフレットを含め紙やすりの1000番程度までを使います。
仕上げにスチールウールとコンパウン

で光沢を出して完成です。

フレットを磨く際に貼り付けたマスキングテープをはがして、テープに奪われた油分を指板オイルで補います。

次はナットの作成です。
このギターはナットの底面が水平ではなく斜めのタイプなので、ナットの溝にしっかりフィットする角度で削れるかが勝負です。

ナットの底面、側面がギターとぴったり合うように削り終わりました。

ナットの溝の位置を決め、普段張る弦の太さに合わせて溝を切っていきます。
牛骨の場合、割と簡単に欠けるので注意しながらの作業です。

適正な溝が切れたら外周を削りながら形を整え、磨きをかけて完成です。

この写真のナット、実は製作2本目です。
1本目は溝を切り終えて外周を削り出している時にナットの内部に亀裂が見つかり「?」と思いながらも削ることで消えてくれることを祈りましたが、ムリでした⤵ こんなこともあるんですね~。
勉強になりました。今後はもっとナットを凝視してから始めようと思います。

ということで、今回の作業を無事終了することが出来ました。本当に良かったです。

元々お客様がお持ちになられた時の弦高が高めで、ネックもはっきりとわかる順反りでした。弦を外すとネックは真っすぐになるのですが、トラスロッドはこれ以上回せないくらいの締まり具合でした。

トラスロッドの構造も特殊で、ボルトを外しての注油が出来ないため、隙間から潤滑油を届かせることで少しだけ締め側に回すことが出来ました。
そしてフレットを打ち込むことでネックが逆反り方向に動いたこともあり、高かった弦高が1弦側、6弦側とも0.4mmほど下がりました。
今回のフレット交換でフレット打ち込みによるネックの反応をいつも以上に感じることが出来ました。

ご依頼いただいたお客様におかれましては、今回のリペアがご満足いただけること
を切に願っております。
この度はありがとうございます。今後とも宜しくお願い致します。